「アルチンボルド展」ー奇才の宮廷画家、日本初の本格上陸！

ジュゼッペ・アルチンボルド（1527-1593年）は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家です。

その名は彼の人生の後半に至るまで人々に知れることは少なかったのですが、アルチンボルドを歴史に残した絵画群、あの、果実や野菜、魚や書物といったモチーフを組み合わせた「だまし絵」のような肖像画は、のちにダリなど多くの歴史的アーティストを驚かせました。

特に彼の代表的な油彩画は、所蔵している美術館が世界各地に広がり、収集するのが非常に困難だと言われてきました。今回、東京・上野の国立西洋美術館は、努力の限りを尽くしてアルチンボルドの油彩画10点を中心に、100点近くの素描やスケッチを収集し、遂に日本で初めてと言える大展覧会を開催することに成功しました。

この歴史的事件に、ぜひ貴方も立ち会ってください。アルチンボルドの奇才の限りを、味わっていただきたいと思います。

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現代まで魅了し続ける、アルチンボルドの世界観

アルチンボルド01
アルチンボルドの自画像

ミラノで画家の息子として生まれたアルチンボルドは、ステンドグラスのデザインから始め、フレスコ画など宗教画を多く手掛けていました。彼が手がけた聖母マリアを描いたタペストリーのデザインは、未だにコモ大聖堂に飾られています。

しかし、彼のこうした宗教画の数々は、今では人々に忘れ去られてしまっています。彼を一躍時代にのし上げたのが、今回の展覧会の目玉でもある、野菜や果実、木の根といったもので構成された独特の肖像画たちであり、のちのアーティストはもちろん、現在を生きる私たちをも魅了し続けています。

ある評論家たちは、こういった作品は気まぐれで描かれたものか、それとも精神の錯乱から来ているものなのか議論してみたりしていますが、多くの学者たちはアルチンボルドの作品はルネサンス期を反映しているもので、精神的な不均衡から生まれたものではないとしています。

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アルチンボルド02
≪春≫ 1563年油彩／板

400年早く生まれてしまった天才

アルチンボルドの才能が発揮されたのは、1562年にウィーンにてフェルナンド1世に宮廷画家として仕えたのがきっかけでした。

後にその息子のマクシミリアン2世や孫にあたるルドルフ2世にも仕え、アルチンボルドは画家としてだけでなく、宮廷の装飾や衣装のデザインも手がけていました。また、祝典や馬場槍試合の企画、水力技師などで非凡な才能を発揮し、ハープシコードのような楽器や、噴水、廻転木馬等も発明したと語り継がれています。彼の名声を高めた肖像画群も、この頃から描き始められました。

アルチンボルドはこの「公務」でいかんなく才能を発揮し、1593年まで30年以上仕えていました。引退したアルチンボルドは、その後まもなく故郷のミラノで死去しましたが、その少し前に彼の集大成と言える名作「フローラ」や「ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世」といった作品を完成させ、プラハに送っています。ルドルフ2世はこの風変わりな肖像画を大変気に入り、アルチンボルドに高い地位を与えたということです。

死後、時代に忘れ去られかけたアルチンボルドは、のちのシュルレアリストたちによって再評価され、「400年早く生まれてしまった天才」とまで高く評価される完成度で、現代にまでその魅力を解き放っています。

アルチンボルド06
「ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世」